今回は東洋医学における肝についてお話していきます。
肝は私たちの体において、血液の貯蔵や浄化といった重要な役割を果たすだけでなく、私たちの感情のコントロールなどにも深く関与しているとされています。
本記事では、肝の基本的な機能やバランスの重要性、肝の不調と関連する症状、そして肝の健康維持のためのアプローチについて詳しく探っていきましょう。
肝の重要性と東洋医学における位置付け
肝は、東洋医学において五臓六腑の一つとされ、私たちの体の中心に位置しています。
その役割は単純な血液の貯蔵や浄化に留まらず心身のバランスを保つ上で重要な役割を果たしています。
肝のエネルギーが流れることによって、私たちは健康で活力に満ちた状態を保つことができます。
さらに、肝は情緒の調節とも深く関連しています。ストレスや情緒の不安定さは、肝のバランスが崩れた状態を反映することがあります。
肝の働きが悪くなると、イライラ感やストレスの増加、情緒の不安定さが生じる可能性があります。
したがって、肝の健康を維持することは、心と体の調和を促進し、健康な生活を送るために欠かせない要素になってきます。
次に肝の基本的な機能について見ていきましょう!
肝の基本的な作用
肝には疏泄作用と蔵血作用という2つの作用があります。
それぞれどのような働きをするのか説明していきます。
疏泄作用
疏泄作用とは、全身の気の流れを調節する機能のことを言います。
気には昇降出入という4つの運動方向があります。このことを気機と言います。
気機を調節することで気の流れはスムーズになり、臓腑や器官の働きが正常に行われます。
また、血や津液の輸送や散布なども気の昇降出入によって行われます。
不要な津液は体外へと出されます。血は必要な時に必要な場所へと送り届けられます。
頭を使うときや目を使うときはそこへ送り出されていきます。運動方向としては昇ですね。
このように疏泄作用は気はもちろんのこと、血や津液の正常な運行にも働いています。
蔵血作用
蔵血作用とは、体内における血の貯蔵・調節を指します。
肝は血を貯蔵し、必要な時に放出します。
これにより血流量を調整し全身に酸素や栄養を供給します。
もう少し具体的に見ていきましょう。
血の貯蔵
肝は体内の血液を貯蔵する重要な臓器です。
貯蔵された血は、運動や消化の際など、身体活動が活発になるときに放出して全身に送り出されます。
これにより、適切な酸素や栄養素の供給が行われ、体の機能や活力が維持されます。
血流量の調節
肝は血液の質と量を調節する役割も担っています。
貯蔵された血を闇雲に全身に送り出しているわけではありません。
必要な場所に必要な量の血を送り出すように調節もされています。
例えば、目を使う作業の際には、目に多く血を流すようにしていますし、運動の際は、筋に多く血を流すように調節しています。
これにより全身の血液バランスを維持されます。血液の適切な循環は、組織や臓器の正常な機能に重要な役割を果たします。
肝の不調によって引き起こされる症状
肝の機能について説明が終わったところで次はこれらの機能が乱れるとどのような症状が起こるのか診ていきましょう。
疏泄作用の乱れ
まずは疏泄作用が乱れるとどうなるかを見ていきましょう。
上述したように疏泄作用は気血津液の円滑な運行に関わってきます。そのため、疏泄作用が乱れると気血津液の流れが悪くなり、次のような症状が現れます
怒りやイライラ
肝は怒りやストレスなどの感情の影響を受けやすく、肝の疏泄作用が乱れると怒りやイライラ感が増すことがあります。
疏泄作用が乱れることで感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなったり、小さなことにイライラしたりすることがあります。
頭痛や目赤
疏泄作用が過剰になることで気の運動方向に乱れが生じます。
昇降出入のうち昇の運動が著しく強くなり、相対的に降の運動が弱まるため、頭や目など身体の上部へ症状が起こります。
それにより頭痛や目が赤くなるなどの症状が起こります。
感情の高ぶりによって頭に血がのぼるとはよく言いますが、そのイメージを当てはめてもらえれば腑に落ちると思います。
腹痛、下痢などの消化器症状
肝の疏泄作用や脾胃の昇降バランスともかかわってきます。身体に必要なものは脾の昇清作用によって気や血のもとになります。不要なものは胃の降濁作用によって大腸へと運ばれ、便として体外へと出されます。
肝が乱れることで脾胃の昇降バランスが乱れ、脾の昇清作用や胃の降濁作用に異常をきたします。
脾の昇清作用に影響を及ぼすと、津液や食物の消化吸収が上手くいかず、下痢となったり、気が上に上がらないためめまいを引き起こしたりします。
胃の降濁作用に影響を及ぼすと、本来大腸など、身体の下部へと運ばれるべきものが胃に残り続けたり反対に上部へと運ばれていったりするため嘔吐や腹痛、食欲低下などの症状が現れます。
このように疏泄作用に異常が生じると様々な症状を引き起こします。
蔵血作用の乱れ
次に蔵血作用の乱れによって起こる症状を見ていきましょう。
蔵血作用は血の貯蔵と血流量の調節を行うため、この作用に乱れが生じると本来供給されるべき場所に血が供給されなくなったり、必要な量の血が貯蔵されなくなったりします。
それにより、次のような症状が起こります。
疲労、倦怠感、貧血症状
蔵血作用が乱れることで、全身の血流量の調節が上手くできず、必要なだけの血を身体に送り出すことが出来なくなります。
血の作用には滋養作用というものがり、この働きによって全身に栄養が与えられ、臓腑や骨、目、耳などが正常に働くことが出来ます。
それらの働きがなくなってしまうため、全身に十分な栄養が行き渡らず疲労や倦怠感、めまいなどの貧血症状が引き起こされます。
運動機能の低下、手足の痺れ
血の配分が上手くいかなくなると、運動機能にも影響を及ぼします。
身体を動かすために働く筋肉もまた血が十分に供給されることで働くことができます。
血が不足すると、筋は栄養されず、機能が低下します。
そのため、手足などを思うように動かすことが出来なくなり、運動機能は著しく低下します。
また、筋肉の強い緊張によって痙攣や手足のしびれを引き起こすこともあります。
このように蔵血作用の乱れは身体各部や運動機能に大きな影響を及ぼします。
肝の健康維持のために必要なこと
上記のような症状を起こさないようにするためには、肝を正常に保つことが必要になります。
特に肝はストレスや感情の起伏による影響を受けやすいため、ストレスを避け、ゆっくりと過ごすことが肝を正常に保ったり、肝の不調を回復したりすることに繋がります。
十分な睡眠や食事、適度な運動は肝の働きを正常に保つために良い影響を与えるでしょう。
基本的なことですが、なかなかできていない人も多いのではないでしょうか?
10分でも良いから身体を動かす。
5分でも良いからいつもより早く寝る。
そういった小さな積み重ねが健やかな日々に繋がります。
まとめ
以上が東洋医学における肝についてのお話でした。
肝の作用は疏泄と蔵血
これらの乱れにより怒りやイライラ、身体の倦怠感や運動機能の低下を引き起こす。
肝を健やかに保つためには適度な運動や十分な睡眠が大切。
ストレスの多い現代社会、肝をしっかりと守ってあげることはとても重要になってきます。
東洋医学の観点からも理解を深め、自分の身体の健康を保っていきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
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