東洋医学見聞録から考える肩こりの治療

読書記録

2023.01.242023.09.07

今回は医師である西田皓一先生の著書「東洋医学見聞録」から肩こりにおける鍼灸治療について考えていきたいと思います

多くの人が悩み、古くからあるにも関わらず治すことが難しい肩こり。

鍼灸治療ではどのように治療を進めていけば良いのか？

本書を通して考えていきましょう

本書の概要
肩こりと鍼灸治療
肩こりのタイプによる治療
1. 膀胱経と胆経を合併しているケース
  1. 膏肓について
  2. 肩外兪について
2. 陽明経の肩こり
  1. 缺盆について
  2. 曲池について
併用したい経穴
1. 百労・百労四穴
2. 大衝・神門
まとめ
1. 関連

本書の概要

まず初めに本書の概要について。

この本は医師である西田皓一先生の著書で上巻・中巻・下巻の全3冊から成り立っており、運動器疾患や内臓疾患、難病までさまざまな疾患における鍼灸治療について書かれています。

著者は医師として多くの患者さんを診ていく中で現代医学の限界を感じていた頃、肩こりの治療を通じて東洋医学と出会いました。

１回の治療での効果、経絡という考え方に魅力を感じた著者は本場中国で鍼灸を学び、自らの病院でも鍼灸治療を取り入れました。

本書は著者が実際に臨床現場で試みたり体験したりした鍼灸治療の内容を通して理論や考察も加えてエッセイ風に綴られた１冊となっています

イラストも豊富で再現性が高く、初心者でもすぐに臨床で役立てることのできる１冊となっているので鍼灸学生はもちろんのこと、新米鍼灸師、ベテラン鍼灸師。どのような人においても参考になる内容がたくさん詰まっています。

東洋医学見聞録　上巻初心者でも再現性がある鍼灸治療の実際 [ 西田　皓一 ]

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それでは肩こりに対する鍼灸治療について考えていきましょう

肩こりと鍼灸治療

まずは肩こりとはどのようなものかについて。

原因

肩こりはデスクワークや長時間の緊張、頭痛や歯痛などの随伴症状など種々の原因によって引き起こされるものです。

命にかかわるものではありませんが肩こりによりストレスや集中力の低下などを引き起こし、それにより生活の質（QOL）を下げることに繋がるため多くの方がこの症状を何とかしたいと感じているのです。

好発部位

次に肩こりを起こしやすい場所について見ていきます

筋肉という観点から見ると次のような筋肉が当てはまります

症状の出やすい筋肉

・僧帽筋

・胸鎖乳突筋

・頭板状筋

俗に肩こりと言いますが首の付け根や前後に症状が出ることが多いです。

中でも僧帽筋は肩甲骨上部を要に頭蓋骨、上部の頸椎から第12胸椎まで広がる筋肉であり、役割としても頭、上腕、脊柱を支えるため最も凝りやすいとされています。

次に経絡という観点からも見ていきましょう

症状の出やすい経絡

・足太陽膀胱経

・足少陽胆経

・手太陽小腸経

となっており、総じて凝りやすい場所は手足の陽経であると言えます。

治療の実際

それではこのような肩こりの症状を鍼灸ではどのように治療していくのか？

様々な考え方ややり方はありますが、技術の習得が容易で今日得た知識が明日の治療に役立つ治療が望ましいと筆者は考えています。

まずは経絡の鬱滞を取り除いてあげることが第一です。

そして症状を改善させ、患者を満足させて帰すためには必ず得気を得る必要があると著者は述べています。

捻転や雀啄を用いて得気を得ることが出来れば症状はぐっと改善されます。

肩こりのタイプによる治療

肩こりの治療には次のような経穴が用いられます

経穴はたくさんあるのですが、症状の場所によってさまざまなタイプがあり、使用してくる経穴も違ってきます。

ここからは肩こりのタイプ別に使用する経穴や経絡を見ていきます。

膀胱経と胆経を合併しているケース

著者は肩こりにおいて１番多いタイプがこのタイプだと考えています。

症状としては後頚部、首の後ろの付け根と背中の上部の張り。

多くの方がこのタイプの肩こりに悩まされていると思います。

このような患者さんに対してはまず天柱、風池、肩井の3か所に刺鍼します。

肩こりにはマストの経穴ですね。学校でもよく練習しますし得気も得やすい場所です。

その後、阿是穴や膏肓、肩外兪、肩中兪などに置鍼します。

膏肓について

膏肓は足の太陽膀胱経で第4胸椎の高さ、後正中線外方1.5寸の場所です。

肩というよりかは背中寄りですが反応がかなり出やすい場所だなと個人的にも感じています。しっかりと反応を見てみると良いでしょう

肩外兪について

肩外兪は手の太陽小腸経第1胸椎と同じ高さで後正中線外方3寸の場所に取ります。

僧帽筋に当たるのですが内下方に刺せば菱形筋にも少し当たります。肩甲骨上角に向けて刺せば肩甲挙筋に当たります。気胸のリスクもあるので深度には注意しなければなりませんが、

刺す方向によって効果の出方も変わってくるのでたくさん試してみたい経穴です。

陽明経の肩こり

次に紹介するのは陽明経の異常による肩こり。

こちらは首の前や外側に痛みを訴えます。筋肉で言うと胸鎖乳突筋や斜角筋の硬さが原因となって引き起こされます。

治療経穴としては缺盆や曲池が用いられます

缺盆について

缺盆は前頸部、大鎖骨上窩前正中線外方4寸に取る経穴で

鎖骨上神経、鎖骨下動静脈などが走るため深さは5mm程度、得気を得てすぐ抜くのが良いと本書には書かれています。

気胸はもちろん神経や血管などを傷つける恐れがあるので慎重に刺鍼を行っていきましょう

リスクのある場所ではありますが、正しく使うことが出来れば効果は大きく、側屈時の凝りを取ることに特に優れています。

曲池について

一見すると首や肩と全然関係ないような場所に思えますが、経絡で言うと首や肩と繋がっているのがこの曲池穴であり手の陽明大腸経であります。

肘関節外方にある経穴で圧するだけでも痛みや首の動かしやすさが出る人がいます。

患側の曲池に15分程度置鍼を行うとこれ１本だけでも痛みが半減した症例も本書に記載があり経絡の奥深さを改めて感じることのできる経穴だなと感じました

併用したい経穴

肩こりの症状がある場合、それ以外にも不眠やストレス、緊張などの随伴症状があることが多いです。その際に併用したい経穴をいくつか紹介していきます。

百労・百労四穴

この経穴は奇穴で、後髪際下方1寸で後正中線外方１寸に取ります。

デスクワークや頭を使う仕事をする方はこの場所に硬さが出てくるので刺鍼すると頭がスッキリすると本書で紹介されています。

これに加え大椎から左右に約２横指の場所の２穴を加えて百労四穴という経穴もあります。

この経穴は教科書には載っていない経穴だったため自分もこの本を通して初めて知りました。

スマホ、パソコンが普及した現代、この場所の硬さがある人は多くいるのではないかと思います。臨床の場でも注意深く観察してみたいです

大衝・神門

こちらはストレスや不眠の多い方に併用したい経穴

太衝は肝経の原穴、神門は心経の原穴。

肝と心はどちらも血との関りが深く、精神安定に重要な場所となってきます。

症状の出方によってどちらを使うか、両方を使うかは変わってくるのですがこれはまた細かい話になってくるので今後機会があればお話していこうと思います。

まとめ

以上が肩こりにおける鍼灸治療についてでした。

考えてみるといたってシンプル！

難しい場所を使わなくてもしっかりと効果を出すことが出来るなと感じました。

そして実際に経験したからこその説得力、腑に落ちる部分が多くありました！

そして個人的には百労穴という新たな学びもありました‼

本書には肩こり以外にも様々な疾患に対する治療法、症例がまとめられています。

ぜひ１度手に取って読んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました！

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